俳優の他、商品のディレクションなど幅広く活動。趣味は料理とランニングと器集め。丁寧な生き方を発信し、多くの共感を得る。
空気は目に見えない。なのに、その場にいる誰もが感じている。
撮影現場のピリッとした緊張。初対面のぎこちなさ。
誰かの一言で、ふっと場がほぐれる瞬間。
私たちは毎日、無数の「空気」の中を生きています。
空気Labは、そんな見えない空気の正体を、
さまざまな角度から探求するシリーズです。
第1回は、モデル・俳優として数多くの撮影現場に
立ってきた高山都さんと安井達郎さん。
撮影の場で、人との関わりの中で、おふたりはどのようにして
「いい空気」をつくっているのでしょうか。
俳優の他、商品のディレクションなど幅広く活動。趣味は料理とランニングと器集め。丁寧な生き方を発信し、多くの共感を得る。
モデルとしてファッション誌を中心に活躍。カメラ好きで映像撮影や写真撮影も行う。YouTubeでは日常の風景を発信。MV監督など映像作家としても活動中。

おふたりとも、撮影現場では空気づくりを
かなり意識されているそうですね。
私はもう、めちゃくちゃ意識しますね。現場の空気次第で仕上がりって全然変わってくるので。たとえばグループの撮影で、みんなが内輪で盛り上がっているとき、ちょっと視野を広げるんです。隅っこで寂しそうにしているスタッフさんがいないかなとか、何か困っていたら一言声をかけてあげたいなとか。
僕も空気にはとても気を遣うタイプで。ただ、僕の場合はできるだけニュートラルでいることを意識しています。ベタベタしすぎるのも違うし、みんなが心地いいくらいの距離感っていうのがすごく大事で。
仕事ってやっぱり、みんなが前向きで、助け合おうとか、協力し合おうっていう空気がある方がいいものができるんですよね。事前にみんなが準備してくれたものがあって、そこに向かってものづくりをするわけですけど、そのゴールを超えて「さらにいいのができたね」って言えるのが一番うれしい。そういう空気って一人が作ろうとしてもできなくて、反響し合うというか、アンテナがつながってはじめて生まれるものだなと思います。

いい空気をつくるうえで、対人関係で意識されていることはありますか。
実は私、もともと人見知りなんです。対人関係がそんなに得意じゃなくて。でも「自分の心を開かないと、相手も開いてくれないよ」って言われたことがあって。それからは、まず自分から開くようにしています。相手のドアをこじ開けようとするよりは、自分が全開にしていれば、怖がらずに来てくれるかなと。
具体的に、現場ではどんなふうに相手との距離を縮めていくんですか。
相手にスピード感を求めないっていうのはすごく大事です。おしゃべりが苦手な方だったら、できるだけわかりやすい言葉で。逆に、聞くのが好きっていう方だったら、私からエピソードトークをして、楽しそうに話してると、だんだんその方も話してくれるんですよ。
それから、見返りを求めないこと。挨拶し続けて無視されても、やり続ける。子供とか動物と接するときと一緒で、一気に近づこうとせずに、自分は心を開いてるよって見せる。そうすると、時間がかかる方でも、ちょっとずつ仲良くなっていけたりするんですよね。
僕は、相手との距離の取り方や質問の仕方って、今でも難しいなと思うことがあります。聞きすぎても違うし、引きすぎても違う。だから現場では、相手の様子を見ながら、その人が話しやすい距離を探るようにしています。

空気を「読む」ことと「作る」ことは、似ているようで違う気もします。
昔は、いわゆるKY、空気が読めない人だと思われたくない気持ちが強かったんです。空気を乱さないようにって、ずっと気をつけていた。でも大人になって仕事の交友関係が増えてくると、憧れる先輩たちって実はすごいKYなんですよ。空気を読まないんだけど、その人が発言すると、ちょっとずれていたとしても、みんなを引っ張っていく力がある。かっこいいなと思ったんです。
そうそう。空気を読んでいるんじゃなくて、自分たちで空気を作っていく人たちなんだよね。
そうなんです。そういう先輩たちが業界にいて、その姿に触れているうちに、自分もそうなりたいなと思うようになっていきました。
私は「飲まれたくない」っていつも口癖のように言ってるんですけど、緊張してる空気とか、怒ってる空気って、見えないものなのにすごく圧が強かったりするじゃないですか。そこに流されないようにしたい。空気を読んで読んで、飲まれてしまうよりも、自分たちで新しい空気を作ればいいんだなって。悪い空気をなくすのは難しいかもしれないけど、新しい空気を作れば上書きできる。
たとえば、否定ってしやすいけど、誰かが肯定したときに「その意見もいいね」ってみんなが乗っていくと、すごくいい空気になるんですよ。得意な人がね、言葉のボールをポンポンて投げるだけで空気が変わるんだったら、全然やればいいと思うんです。やって悪かったことって、本当にこの人生で一回もないから。


忙しい日々の中で、自分自身の空気をどう整えていますか。
日常のちょっとしたモヤモヤって、誰にでもあると思うんです。でもそれを抱えたまま現場に出ると、やっぱり空気に出てしまう。だから私は、自分の空気を「清浄」するようにしています。本を読んだり、きれいな写真集を見たり、素敵な映画を見たり。感動する映画を見て泣いてみたりすると、溜まっていたモヤモヤが半ば強制的に押し出されて、気づいたら結構濾過されてるんですよ。
あとすごく物理的なことだけど、朝の空気が好きで。窓を開けて新鮮な空気を入れるだけで、自分の中の空気が少し整う感覚があります。
僕は、切り替えを大事にしています。現場に入ったら、そこにいる人たちと一緒にものを作る時間になる。だから、空気が悪いと感じたとしても、そこに飲まれすぎないようにする。自分がどう振る舞えば、その場が少し良くなるかを考えるようにしています。
そういう空気への意識って、昔からのものなんですか。
そうかもしれないですね。うちは商売をしていたので、お客様と接する機会が子どもの頃から本当に多かったんです。だから怒られてどんだけ泣いていても、お客さんが来たら笑顔でいらっしゃいとか。切り替えが元々めちゃくちゃ早い(笑)。
僕の場合はやっぱり、さっき話した先輩たちの存在が大きいですね。ああいう人たちを見ていると、自分も少しでもいい空気を作れる側にいたいなって、自然に思えるようになりました。